スイレン ~水恋~

祈りながら、願いながら。拳に力を込めてく。ここで足踏みしてる間にどんどん減ってくのよ、二人の限られた時間が。

「・・・志田、銃を下ろして」

深く息を吸って命令した。

「あたしを放しなさい」

(いら)えがなかった。

「志田・・・っっ」

強く声を上げると、ようやく解放される。握ってた凶器を上着に隠して、腰の辺りに収めた。

「泥船で一緒に沈んでやるつもりですか」

「その時になったら考えるわ」

投げやりで言ったつもりなんてない。先のことを悩むより、もっと大事なことがあるだけ。

答えに目を細めた男は、うんざりしたように呟いた。

「・・・柳と道連れはご免なんですがね」