スイレン ~水恋~

「温々と甘やかして育てた女に、帰るか知れない男が待てるとでも?」

まだどこか焦点の定まってないあたしに構わず、志田が冷ややかに撥ねのけた。

「柳は命令されればいつでも死にに行く。・・・お嬢には止められませんよ」

その時はまた、笑って置いてかれる。追いかけても縋りついても、『じゃあね』・・・って。

お兄は、隆二の毒がいつかあたしを殺すって言った。いつか。明日か。別れが必ずくる。自分もこの世から消えたいくらいの悲しみに沈められる日がくる。だからお兄は。

それでも。

それまででも。

隆二といたいの。

きっと帰ってくるわ。

あたしが待ってるんだから。

まだ死ねないでしょ・・・?

ねぇ隆二。