スイレン ~水恋~

「・・・隆二、どこに、行ったの・・・?」

自分の声なのに遠く聞こえた。

「少しばかり遠出してやがるんですよ」

「帰って・・・こない、・・・の?」

「・・・・・・大事なお嬢さんの誕生日を忘れてやしないでしょう」

伊沢さんの答えがYESでもNOでもないのを。受け止める着地点がどこにもない。頭の中で空回りし続ける。

命懸けの世界の片隅にいるあたしだって、生き死には隣り合わせ。・・・分かってる。分かってるけど。

隆二は。自分の血を流さない男だと思い込んでた。面倒くさがって、上手く立ち回る男だって勝手に。

「隆二を待ちてぇならこの伊沢が・・・、お嬢さんを預からせてもらいます」