スイレン ~水恋~

ああ、やっぱり秋生ちゃんだ。

思わず涙ぐんだ。お兄の(さや)を収められそうだったのは伊沢さんくらいしか。ちゃんと分かってくれてた。

「淳人への義理立てもあるんでしょうし、無理を通しやしませんが。・・・お嬢さんはどうしてぇと?」

「隆二のところへ帰りたいんですっ」

懸命に声を振り絞る。逃がさないとばかり、拘束する腕がまた強さを増した。

「どっちも捨てられないし、どっちを選んでも後悔するって分かってます。それでもお兄は、一生あたしのお兄だから!手放したら二度と戻らない方を選ぶって決めたんです・・・っっ」

失いたくない、どうしても。

「行ったところで柳はいませんよ」

思いを打ち消すように無慈悲な声がした。

「今生きてる保障もない。・・・だろう?」

トリガーに指をかけたまま、伊沢さんに向け放たれた見えない弾丸。

だけど撃ち抜かれたのは。

あたし。