反応したあたしに、抱き竦める腕が緩む。身動いで恐る恐る見上げた先に、凍りついた眼で一点を睨む志田の横顔。利き手で構えた銃が、躊躇なく侵入者に狙いすまされてるのを青ざめた。

「や、・・・待って!撃たないでッ」

混乱しながらも必死に。伊沢さんがここにいるのって、まさか。

「隆二に頼まれたんですか・・・っ?」

期待した、そうだったらって。

鳴子で会った時と同じ板前服姿の伊沢さんが、相変わらず不敵に口角を上げて見せる。

「・・・藤代のお嬢が訪ねて来ましてね。困ったら伊沢を頼れと、梓お嬢さんの伝言だったそうで」

「!!!」

「連絡が取れねぇと縋られちゃ放ってもおけません。ガキ共の尻拭いに、差し出がましく出張(でば)らせてもらいました」