午後は部屋には籠もらず、リビングで雑誌をめくったりテレビを観たり。食後の運動がてら掃除を宣言したら、警護係が恐縮して石になったから、しょうがなく遠慮した。わりと気を遣う。

ダイニングテーブルでタブレットに目を走らせる志田は、時折りスマホで電話をかけながら席を外す。社長業の他にも仕事は色々あるだろうし、鳥籠の番人を続けるわけにはいかないはず。

廊下に出てた志田がタブレットの前に戻ったタイミングで、ソファから身を乗り出すように声をかけた。

「ねぇ志田」

「何です」

「あたしを閉じ込めて意味ないのは分かってるでしょ」

「・・・それは若が決めることですが」

「お兄に言って。お兄を愛してるのも隆二を好きなのも変わらないって」

志田が顔だけこっちに向けた。

「こんなのお兄が苦しいだけだし、志田にもメリットなんかないじゃない」

力尽くで人の気持ちを変えられるなんて、本気で思ってないでしょ。

真意が別にあるのかと目を凝らす。作り物みたいなその無表情に。