二人の番犬をお供に表を歩き回って分かったこと。

建物は森に囲まれ正面以外、逃げ道ナシ。玄関先から車道までのアプローチが長い分、人目につかない格好の別荘地。て言うか車すら滅多に通らない。おまけにクローゼットに積まれた箱の中身は、逃走向きじゃないミュールばっかりで。

「秋生ちゃんほど運動神経よくないのよねぇ・・・」

あてがわれた部屋のベッドに仰向けに寝転がり、ぽつんと呟く。

レモン色の天井に、涼しげに笑う彼女の幻が浮かぶ。授業は適当でもスポーツ行事の類いは皆勤賞モノだった。うらやましい。ここから抜け出すのに、死に物狂いって言葉しか浮かばない。

頭の中で、お兄、隆二、志田に秋生ちゃんの顔がマーブル模様を描いて渦巻いた。

向こうは監禁軟禁のエキスパート。敵わないのは承知してるけど望みはあるの。あたしと連絡取れなくなったら、秋生ちゃんが絶対見過ごさないに決まってる。まして誕生日を前にして。

突破口を見つけたら今度はためらわない。隆二を捕まえに行くわ、戻れない壁の向こうへ・・・!