スイレン ~水恋~

「往生際がいいですね。もう少しごねられると思ってましたが」

「お兄が帰す気ないって言ったの、志田じゃない。おかげで心の準備くらい出来たの。ごねて帰れるなら、とっくにしてるわ」

「・・・・・・・・・。見張りは外にもう一人いるんで、大人しくしててもらえますかね」

間を置き、いつものうんざりした口調で聞こえた。

つまりここには志田を入れて三人。交代で誰かが外したとしても、腕の立つ極道を二人も相手にして鬼ごっこはキツそう。

「一日中引きこもって何してろっていうの」

横目で睨んだら目が合った。

「雑誌なら後で買いに行かせますよ。テレビも衛星放送で好きに観られます。・・・その辺を散歩するぐらいはしょうがないでしょう」

「だから志田といてもつまんないのよ」

漂ってきた殺気を手で払いのけ、構わずに続けた。

「それで?いつまでここにいればいいの?隆二を忘れるまで?だったら、あたしが骨になるまで付き合ってもらうけど」