スイレン ~水恋~

シャワーを浴びて、化粧水と美容液を素肌に叩き込み。Tシャツとカプリパンツのラフなスタイルを選んで、階段を下りてく。

「おはようございます」

「あ、おはよう」

リビングの扉を塞ぐように仁王立ちしてたオールバックの黒スーツが、こっちに気付くと折り目正しく頭を下げ、中へ通してくれる。

名前は知らないけどお兄の周りで見覚えがあった(ひと)。いつもなら志田ひとりに任せきりなのに。番人を増やすくらい徹底してるってこと。

「ねぇ、あたしのスマホは?」

ダイニングテーブルにつき、ボール皿にこんもり盛られたグリーンサラダをフォークでつつきながら。当然ここに置いとく筈ないのも分かってて訊いた。

「預かってるのは若です。・・・家捜ししても構いませんが」

チーズとハムのホットサンドを乗せたプレートが置かれ、素っ気なく志田が答えた。

あたしが眠ってる間に、折れかけの羽根を優しくもぎ取ったお兄。痛みじゃなく空気がひんやり背中に染みる。