気怠い微睡みから醒めれば、まだ寝ぼけた(まなこ)に映るレモンイエローの天井。それから格子の小窓、レースカーテン越しに差し込む薄日。一瞬、混乱して飛び起きる。

寝かされてたベッド、脇のチェスト、クローゼット、ドレッサーはどれも品の良いアンティーク調。漆喰の白壁と、ニッチに飾られた紅薔薇のスワッグに、違う国で目覚めたような非日常感に包まれて。

ここが楽しい旅行先だったらどんなにか。だけど紛れもなく、昨晩連れて来られたどこかの別荘地。鳥籠って言う名前の。・・・閉じ込められるなら実家(うち)だと思ってた。

胸がひどく締め付けられる。誕生日を心から祝ってくれた優しいお兄にこんな真似をさせたのは、あたし。

憂鬱な吐息が洩れた。薬を仕込まれたなら、多分カクテル。喉が渇いてるくらいで具合も悪くないし、量は加減してもらえたんだろう。

ベッドからのそのそ下り、無垢の床板に揃えてあったスリッパに素足を突っ込むと、小窓から外を覗いた。どうやら部屋は二階で、広がる雑木林のすき間に建物らしきものが小さく見えた。曇りがちな天気はこれから雨を呼ぶかも知れない。

取りあえず山奥にポツンと一軒家・・・って風でもないことに胸を撫で下ろす。秘境じゃないならどうにかなりそうで。