ごめんなさいって謝り倒すより貫いてみせたかった。あたしなりの本気を。意地より一途を。

掌の温もりがするりと下りて、愛しむように頬をなぞられる。生まれて初めて自分の意思で自分から、お兄の差し出した手を取らなかった。

寂しい、口惜しい、苦しい、悲しい。全部を混ぜ込んでお兄の眸の奥が揺れる。言葉じゃないものでお互いを確かめ合ってる気もした。

指先が離れた刹那、勝手に躰が動いて。ソファから立ち上がり深々と頭を下げた自分を、外から見てるみたいな感覚。

脇に置いてたクラッチバッグを手に取ると、お兄の顔を見ないで踵を返す。見たら涙栓が壊れる。決心が折れる。甘やかされたくなる・・・!!

「お嬢」

すれ違いざま志田の低い声。

「つい」

ついてこなくていいわ。わざと突っぱねようとした。途端、視界がたわむ。ぐらり。意識が揺らいで、ヒールの足許が頼りなくふらつく。