「親父ぐらいになっても、あずにそう言わせたいがな」

お兄が笑う。

早速、ガラスの器がふたりの前に置かれ、シェフが夏野菜のテリーヌだと丁寧な説明を添えてくれる。ブロッコリーにサーモン、オクラやパプリカで色鮮やか。すっかり胃袋を掴まれたあたしは次が待ち遠しい。

コース的なフレンチなのかと思えば、カルパッチョにラタトゥイユ、ガレットやキッシュでテーブルが埋まった。気取りがないお料理は、どれも旬が詰まった絶品だった。

ゆっくり食事を楽しみ、シェフが引き取った後はお酒をたしなみながらソファで寛ぐ。

バーテンダーを努めてくれた永堀さんがお兄にロックのウィスキー、あたしにはバレンシアを。・・・意外すぎた。見た目は脳まで筋肉質そうなのに。

「これは俺と杏花からだ」

そう言ってお兄が手渡してくれたのは、アルファベットのロゴが入った小ぶりなショップバッグ。