甥っ子でも姪っ子でも美人しか生まれてこないのは確実だし、男の子だったら跡取り誕生。新しい命が、絶やさずに千倉の家を受け継いでくれる。・・・例えあたしがいなくなっても。

太い針が刺さったままの胸の奥に隆二の存在を押し込め、明るく振る舞った。

お兄も、まるで時間ごと隆二を切り取ったみたいに。数ヶ月前まで当たり前にあった笑い顔を惜しみなく、あたしに向けた。

馴染みのどこだろうと思ってる内に、車は一般道から有料道路を走ったり、行き先の見当もつかない。訊いてもお兄は不敵にはぐらかすだけ。

一時間半ちょっとのドライブの末、ずい分と閑静な場所に車は停まった。運転手の永堀さんがお兄側のドアに回ると、こっち側のドアも外から開かれ、志田が手を差し出す。

「俺達だけだ、気兼ねはいらんぞ」

横に立ったお兄と見上げてるのは、仄明るい外灯に浮かび上がる南欧風の一軒家だった。