相変わらずロボットみたいなポーカーフェイス。だけど。地べたに引き摺ってる羽根が、見えない掌でわずかに掬い上げられたようで。

戸惑いながら志田を見つめれば、あからさまに目を逸らされた。

「ねぇ、それって」

諦めるなって励ましてるの?
曲げられないなら覚悟して貫け、って?

もしそこにお兄が来なかったとしても、答えは聞き出せなかったと思う。口が頑固な男だから。

「落ち着いたか、あず」

傍らに立って見下ろすお兄の微笑みは優しい。その下には色んなものを堪えてるに違いないのに。

「だったら出かけるぞ。ここからはお前が主役だ、エスコートは俺に任せてくれるな?」

頭を撫でてくれる大きな手の温もりが愛しい。いつでもあたしを守ってくれた温かい手。

右に左に不安定だった胸の中のシーソーが、次第に片側に傾いてく。地面に足がつく。

せめて今夜は。最高に可愛い妹で終われるように。
お兄の妹で幸せなあたしでいられるように。

「うん・・・、ありがとお兄」

笑った。精一杯。