拘束されたままで爪先が食い込んだ掌を固く握り、項垂れる。

隆二を選べばお兄がお兄じゃなくなる。・・・そんなの考えるだけで真っ暗。心細くて寂しくて寂しくて、胸が張り裂けそう。

なのに心はどうしようもなく隆二を恋しがる、焦がれる。隆二を失くしたらガランドウになるの。あたしがあたしじゃなくなる。

答えを出せてるのに。お兄に捨てられたくない自分は、ただの意気地無しなの・・・?

愛の重みで折れかかった背中の羽根を、引き千切って帰れるなら。帰りたい。帰りたい。

「お嬢」

不意に解放された手首。志田の節くれ立った指先が、固まったあたしの拳を剥がしてく。

「お嬢は、昔から気に入ったものは手放さない頑固な女でしたよ」

いつものうんざりした口調に、手元からゆるゆると目線を上げてった。

「・・・自分は今更ですがね」