縁を切るってお兄の切り札に、背中の羽根が見る間に(ハガネ)に変わって。動けなかった。動かなかった。

お兄の本気加減を甘く見積もってたの。そこまで言うはずないってどっか自惚れてた。あたしより隆二の方がよっぽどお兄を分かってた。だからもっと必死にオレを欲しがれって、生半可な覚悟なら無意味だ・・・って!

追いかけて、ただ縋っても隆二の心には響かせられない。分かってる、それでもっっ。

あたしは志田の手を引き剥がそうと渾身の力を籠める。

「離さないと一生恨むわよッ、死んでも赦さないから・・・!!」

「行かせるなと若の命令ですんで」

無情な宣告。左手首を締め付けられる痛みに、夢中で振り上げた右の拳は難なく捕まり、逃れようしてもびくともしない。

「少しは弁えて下さい。・・・この程度でお嬢を放り出す男なら追う価値もないと言ってるんです」