本能。直感。このまま行かせたら隆二がいなくなる。行カナイデ!!声にならない声で叫んでた。全身で細胞っていう細胞が。

闇色の双眸があたしを見ていた。冷めてるのかすら分からない底無しの眸。子供をあやすみたいに空いてる掌が頭の上に乗った。

「・・・もっと必死にオレを欲しがれ」

淡く口許が緩む。

「オマエを置いていけないくらい」

瞬間。長くて太い針があたしの真ん中をひと突きにした。

串刺しになったまま、袖口を握ってる指先を隆二はやんわり外し。腰を上げてお父さんに一礼するのを、悠然と部屋を出てくのを、まるでスロー映像のように見送る自分がいた。

扉の向こうに隆二が消え、お父さんの半笑いを背中で聴く。

「よりによって柳たぁな。梓も面倒な男に惚れやがる」

途端、頭の中で何かが弾けた。