選んだのは花柄総レースのワンピースドレス。隆二のシャツ色に合わせ、赤みが濃い紫色。スカート部分はふんわり、下にチュール地を重ねてるのがお気に入りの。髪もねじりヘアでエレガントにまとめた。

実家の出入りは、普段は裏門を使うのを今日は正門から。大きめでも3台は置けるお客用のガレージに乗り入れた車。エンジンを切ったと同時、待機してた志田が助手席側のドアを外から開いた。

「お帰りなさいお嬢」

「ただいま」

差し出された手を取り、滅多に履かない7㎝ピンヒールでしっかり地面に立つ。

「・・・お疲れ様です」

「お疲れ」

運転席から降りてきた隆二に目礼した志田の、敬語を崩さない他人行儀は相変わらず。嫌ってるわけじゃなさそうなのに。

「組長が挨拶したいそうで」

「行こっか梓」

「あ、うん」

誰の家なのかと思うくらい堂々。笑った隆二はあたしの腰に腕を回し、ゆっくり歩き出す。