結局ふたりがベッドを(から)にしたのは、会社ならとうに昼休みが終わった頃。シャワーを浴びたあと、フレンチトーストに明太子と高菜の和風パスタを手際よく作ってくれた、ボクサーパンツ一枚の男。

giraffeで使い切らなかった食材だとか、実は冷蔵庫の中身も意外と豊富。スパイスなんて、あたしの部屋の常備品は七味と塩コショウくらいなのに。

「いただきます」

ソファに横並びで座り、リビングで遅めのランチ。

仕事で憶えただけで得意でも好きでもないって言いつつ、隆二は自炊を億劫がらない。

あたしの場合、作り置きのおかずがタッパーに詰められて実家から配給される甘やかされ生活で。料理が不慣れなのを真っ先にカミングアウトした時も。

『オレが掴まれたのは胃袋じゃないからいいよ』

軽く笑い返されて拍子抜けだった。肉じゃがを期待するのが男だって思うでしょ?

これからはここで帰りを待つ間に内緒で特訓するの。できたら鳴子の伊沢さんに手ほどきしてもらって、少しは女を磨かないと。

「美味い?」

鷹の爪がピリっと効いてて、明太の辛味と高菜の塩味のバランスが絶妙。隣りからのコケティッシュな流し目に、お行儀悪くもごもごしながら。

「隆二が作るの、全部おいしいわよ?」

「褒めてもらった礼に、赤ずきんちゃんの誕生日は好きなの作ろっか。何がいい?」

フォークでパスタを巻き付けてる指先が思わず止まった。