そろり。上を向くと、インテリ臭いくせに抜き身くらい物騒な男が斜めに見下ろして。

「言ったからにはせいぜい、使い潰してもらいます」

約束なんだか脅しなんだか。

「それまで自分の命はお嬢に預けますんで」

ようやく離れたあたしに向き直ったポーカーフェイス。預ける相手が違うでしょ、大袈裟ね。喉元まで出かかった減らず口は飲み込む。

いたらいたで『ほっといて』。いなくなるのも許せない。子供じみたワガママは、志田の掌の上で転がり続ける気がした。

「・・・あたしに預けても利子なんか付かないわよ?」

「承知してます」

素直になれない意地っ張り娘に、ほんのわずか志田の口角が上がって見えた。錯覚かもしれない。・・・ううん錯覚じゃない。きっと。