物心ついた頃から冗談はひとつも言わない男だった。止めなかったら本気で死にに行く。しがみついたまま夢中で叫んだ。

「だいたいあたしのお守りにうんざりしてたの志田でしょッ?隆二のことも怒ってばっかりで、楽になりたかったんじゃないの?!不用品ってなによ、ふざけないでっっ」

あたしに使う時間を自分に使えばいいのに。そう思ったのがなんでそうなるの!

「志田が要らないなんて一度も考えたことないわよっ。あたしを置いてこうなんて百万年早いんだからっっ」

色んな感傷が込み上げて弾けて(ほとばし)った。

引き留めたくて必死だったのが、途中から口惜しくなって支離滅裂。志田の分からず屋、あんぽんたん、薄情者!!!脳内で吠える。

「・・・・・・離してもらえませんかね」

「イ・ヤ!」

「行きませんよ、・・・どこにも」

いつものうんざり声が妙に懐かしく聞こえた。