おつまみの盛り合わせに、カルパッチョやナチョスが並んでいつになく華やかな空気のgiraffe。“身内”だけの気安さもあるのかしれない。

「あのね秋生ちゃん、住んでるわけじゃないから。誰かが帰してくれないだけだから!」

なんとなく決まり悪い心地でバラライカを一口。隆二が悪戯気味に笑う。

「もう返す気ないんだけどなぁ」

「会社もこっちから通ってて、住んでるよーなもんでしょ」

秋生ちゃんが言うのもご尤も。

何しろ仕事が終われば速攻で自分のマンションに戻り、掃除洗濯を片付けたあと隆二の部屋へ・・・がルーティンになってて。ほとんど生活の軸はこっちに移ってるし。

朝は朝で、歩いてすぐだった会社に辿り着くまで正味45分。寝不足のうえ、慣れない電車通勤にライフポイントをゴッソリ削られる毎日。

それでも意地を通してるのは、“男にうつつ抜かしてる”なんて二度と志田に見下されたくないのと。棘になって抜けないお兄への後ろめたさ。