建物の谷間の物陰でセカイもモラルも遮断して。人目もはばからず没頭する。

ようやく解放されても昂ぶった熱に浮かされて動けない。胸元に縋りついたままで、頭の天辺に柳さんの吐息が埋まる。

「・・・そんな可愛いコトされると、今すぐ食べたくなっちゃうなぁ」

強請るような甘い声。細胞がどんどんハチミツ漬けにされてく気分。

「大事に取っとくつもりだったんだけど、・・・いい?」

どう返事すればいいのかと、おずおず顔を上げた。

鷲鼻のくっきりした面差し。(おとこ)らしいのに尖ってなくて柔らかい印象は最初から。笑顔、仕草、声。気が付くと吸い寄せられてる、いつも。

「ウチ来る?」

「・・・・・・行ってあげてもいい。・・・けど」

目を泳がせながら。素直なYESはプライドが許さない、安い女じゃないんだから。ささやかな強がり。

「そっか。ちょっと待って」

あたしの腰に片腕を回し、空いてる手でズボンの後ろポケットからスマホを抜き取った彼は、その場で電話をかけた。