千倉の娘が鷺沢一家のシマを歩いてたって、そこは問題じゃないと思うの。問題は誰と歩いてるか。・・・な、気がするんだけど。

「ねぇ柳さん」

「んー?」

「あたしと一緒で平気なの?見られても大丈夫?」

「何が?」

気持ち焦ってるあたしに、涼しそうに口角を上げた彼。

お兄も一目置いてる柳さんの、鷺沢での立ち位置は知らない。でも、いつどんな風に足許を掬われるか。朝が来て夜が明けても、暗闇の世界だから極道(ここ)は。

「オレはひとつも困んないよ。心配してくれた?優しいね」

やんわり笑った気配がしたかと思った途端。繋いだ手にぐっと引き寄せられ、よろけて柳さんの胸元に。

顔を上げようとしたのと、頭の後ろを捕まえられたのが同時だった。気が付いた時には口が塞がり、自分のじゃないモノに埋め尽くされてた。

逃げようとしても追いかけられ、(ねぶ)る舌に絡みつかれる。自分がどこに立ってたか、理性も羞恥も投げ出すほど濃密なキス。