冗談ともつかない口調に青ざめたあたし。柳さんが悪戯っぽく上げた笑い声にようやく、話をはぐらかされてたことに気付いて。

「脅かさないで、もう!」

わざとらしく怒って見せれば、運転したままでお兄より骨ばった掌に頭を撫でられた。

志田との本当のやり取りを黙ってたいなら、あたしもフタをする。時には“見ない言わない聞かない”のが暗黙のルール。

「ところでオレ腹減ってるんだけど、付き合う?」

「ちょっとくらいなら」

正直、別腹さえ余裕がない。どれもこれも美味しくてつい欲張っちゃったし。

「いいよ、隣りにいてくれれば」

不意打ちの甘い横顔。

心の隅で後ろめたさに苛まれてても、包まれてそれごと持っていかれた。あたしを誰より愛してくれるお兄を、今は忘れる罪さえ。