スイレン ~水恋~

兄離れって言葉が片隅で頭を出したり引っ込んだりしながら。実家に帰り、百歩譲ってお兄の部屋で三人で呑んだ。

今は、奥に離れを新築中で。完成したら二人で移るらしい。大人になるつれ様変わりしてったこの部屋も、そのうち片付いちゃうんだろう。

お兄は、あたしの子供の頃の話や色んな思い出話を杏花さんに聞かせてた。妹が可愛くってしょうがない顔で。

「妬けちゃうくらい淳人さんは梓さん思いですね」

「俺の宝物だからな、あずは」

悪戯気味に笑んだ杏花さんにお兄が少し照れたとき。お酒がけっこう入ってた所為もあるけど、ぶわっと感情が昂って見事に涙腺と、堰き止めてた本心が決壊した。

「だったら結婚なんかしないでよぉ、お兄のばかぁ~~っっ」

そのあとで「お兄はあたしのなんだからぁっ」と泣きじゃくったのは憶えてる。あたしの頭を撫で、子供をあやすように胸を貸してくれたお兄。

「俺とあずは一生切っても切れない兄妹だ。結婚したからって何が変わる」

変わらない。変わったら許さない。でも、でもね。大好きで大好きでしょうがないお兄の愛情を独り占めできるのが妹の特権だったの。譲りたくなんかなかった誰にも。杏花さんにも・・・っ。