スイレン ~水恋~

どこに・・・?

柳さんが見せてくれるセカイ(ところ)なら、どこでも。

手が無意識に伸びて、脚が勝手に前に出る。お兄と繋がってた見えない鎖の輪をすり抜ける。

「梓・・・!」

苦しげに呻いた、そんな声を初めて聞いた気がする。はっとお兄を振り返りかけて、柳さんに捕まる方が早かった。

「大丈夫、ケンカくらいで淳人はお兄ちゃんをヤメないよ」

あたしを腕の中に閉じ込め、あやすみたいに笑った気配。

「いつでも選んでいいから。オレでも何でも好きなもの」

それって。

言葉どおりよりもっと深い意味に聞こえて。胸元から顔を上げた途端、唇が盗まれる。

「ご主人様の願いを叶えるのがオレの役目」

艶めかしい笑みに、全部持ってかれる。

ちょっと前までは柳さんが軽薄な(ひと)にしか思えなかったのに。お兄の言うことなら迷わず頷けたのに。