お兄はあたしを見なかった。黙って柳さんを見据えてた。知ってる、一度口にしたことは覆したりしない、組の跡目が簡単に曲がりも折れもしないことくらい。

それでも必死に声を張った。

「柳さんにもあたしの代わりなんていないの。ここにいるってそう言うことでしょ・・・?!柳さんはお兄が思ってるだけの(ひと)じゃない、お願い信じて!」

「やっぱりオレって見る目あるなぁ」

歌うような柳さんの声が被さった。

「可愛いだけの女じゃないとことか?信じなくていいから、妹のお強請りくらい聞くモンだろ淳人」

「出来ないと言った筈ですが」

「冗談言いにわざわざ来るほどヒマじゃないんだけどねぇオレも」

笑った。柳さんが。

刹那。・・・本能で息を殺した、身の毛がよだつほどの殺気に。