気配が殺されて読めない眸の奥。見えない鉤爪(かぎづめ)に頭を鷲掴みにされてる。まだ選べる、叶う。萎んで潰れかけた心が一気に膨らんだ。思いが溢れ返った。お兄への罪悪感すら弾き飛ばして。

オネガイ。
連れてって。
居タイ。
そばに。
もっと・・・っっ。

こんなに呆気ないの。顔を見ただけで全部持ってかれる、細胞ごと塗り替えられる。思い知ってる、お兄の可愛い妹でいられなくなってること。自分でどうにも出来ないくらい。

あたしはもう。

「柳さんじゃなきゃ駄目なの・・・っ」

縋るようにお兄の横顔を仰いだ。

「ずっとお兄があたしの真ん中にいたの。でも気付いたら柳さんが真ん中になってた。他の誰かじゃ無理なの、お兄の代わりはっ」