木戸をくぐれば駐車場だった。竹垣で囲われ、横並びで十台は停められそうな広さ。通りから奥まって、乗り降りするお客のプライバシーが配慮されてる。今夜は半分ほど埋まり、黒塗りのセダンが二台、別れて待機してた。

運転席からそれぞれ下りてきたのが見え、気を取られて前につんのめりそうになった。お兄が不意に立ち止まったせいで。

「どうし・・・」

隣りを振り仰いだ。

あたしの前じゃ滅多にしない厳しい横顔がそこにあった。さらに左寄りの方向を冷たく見据える視線を追って、目を凝らす。黒っぽい、セダンよりフロントがスレンダーな一台の前に佇む人影。外灯の灯りじゃ背格好くらいしか、はっきり判別できない。

ゆらりと動いたシルエットがこっちに向かって来る。咥え煙草で悠然と。肩に乗ったままのお兄の指先に力が籠もった。前に立った男を見上げ、あたしは息も忘れてる。

・・・うそ。なんでここにいるの・・・?

「・・・・・・柳さん・・・」