絶望的な気持ちで振り絞った刹那。低く呻り出したスマホのバイブ音に、出かかったその先がするりと滑り落ち、どっかに沈んだ。

「すまんな」

ぎこちなく顔を上げれば、手元に目を落とすお兄がわずかに眉を(ひそ)めたように見えた。

仕事のトラブル・・・?帰りが遅いのは杏花さんからも聞いてる。心配そうだった、身体を壊さないかって。ここに来た分の時間のしわ寄せだってある筈なのに、そんな素振り少しも見せない。メッセージで指示を伝えてるのか黙って集中する姿に、鼻の奥がつんとなった。

区切りがついたお兄にあらためて見つめ直された時、萎みかけの風船も同然だったあたし。

「お前のことを一番に思ってるのは俺だ、この先も変わらん。あずに見合う男は俺が見つけて必ず幸せにしてやる。・・・いいな?」

()されて空気が抜けてく。減ってく。
放っとけば真っ(たい)らになる。
膨らんだあの(ひと)への想いも。

・・・それでいいの?

ねぇ。

「・・・・・・・・・うん」

力なく呟いた。

為す術もなくて。