愛がなくても、生きていける




そんなやりとりをしているうちにタクシーはあるマンションの前で泊まった。

そこでタクシーを降りると、目の前には3階建ての低層マンションが建っている。



低層とはいえ新宿の一等地にあり、見た感じまだ真新しそうだ。

家賃高そう……とつい思ってしまう。



「行くぞ」

「あ、うん」



大迫に言われて歩き出そうとした、けれどまだ酔いがまわったままの足元はふらりとよろけてしまう。

すると彼はそんな私の肩をそっと抱いて、体を支えるようにして歩き出した。



なにか甘い言葉や熱い眼差しがあるわけじゃない。

だけど服越しに触れる長い指や、体を支えるたくましい腕が、この胸をときめかせてしまう。



マンション内に入りエントランスを抜け、3階のフロアへと向かう。

エレベーターを降りて一番角の部屋のドアを彼が開けると、広い玄関といくつかのドアが並ぶ廊下が続いていた。



「お邪魔します……」



靴を脱いで家にあがると、彼の部屋の芳香剤だろうか、シトラス系の爽やかな香りがした。

目の前のドアを開けるとそこには広々としたリビングがあり、その奥に4人掛けのダイニングテーブルとアイランドキッチンがある。



室内は全体的に物が少なくて、白のローテーブルに黒いラグマット、グレーのソファと大きなテレビと最低限のものと、背の高い観葉植物がひとつ置いてあるだけだ。



「なんていうか……殺風景だね」

「仕事ばっかりで趣味も特にないからな。仕事関のものは奥の書斎にまとめて置いてるし」



話しながら、大迫はリビング奥のドアを開ける。

するとそこは寝室のようで、大きなベッドにサイドテーブルがあるだけの部屋だ。

彼はその部屋のベッドの上に私をゆっくりと座らせた。



「今日はもう寝ろ。その状態だし、今日は風呂入らない方がいいだろ。明日の朝シャワー使ってもいいから」

「えっ……私ソファで寝るよ。大迫の家なんだし」

「俺の家だから権限は俺にある。ってことでお前はベッドで寝ること」



大迫はそう言い、他の部屋から服を取ってくると私に手渡して会話もそこそこに寝室をあとにした。