愛がなくても、生きていける




それから何時間が経っただろうか。

ふと目を覚ますと、私はタクシーの後部座席にいた。



「目、覚めたか?」



その声にぼんやりとした意識のまま顔を上げると、すぐ目の前には大迫の顔がある。

その状況から、私が彼にぴったりとくっつき肩を枕にして寝ていたのだと気づいた。



「えっ!?あれ、なんで!?」

「やっぱり覚えてなかったか……お前、二軒目で飲みすぎて潰れて大変だったんだぞ」

「そうなの!?」



言われてから記憶を辿れば、たしかにそんな気がする。

一軒目のスペインバルは、大迫の言葉通り料理もワインも美味しくて、ほどよく酔っていい気分だった。

まだ時間も早いしとそれから二軒目の居酒屋に行って、そこでついつい飲みすぎてしまって……途中で眠くなったあたりで記憶がない。



まさかこの歳で飲みすぎて潰れるなんて情けない。

よほど浮かれてしまっていたのだろうか、と思いながら車の窓の外へ目を向けると、車は私の家とは逆の新宿方面へ向かっていることに気づいた。



「あれ、タクシーってどこに向かってるの?」

「俺の家」

「え!?俺の家って、まさか大迫私のことお持ち帰りするつもりだった……!?」

「なわけあるか」



私の発言に、大迫はつっこむように私の頭を軽く小突く。



「酔い潰れて寝た清水を、俺がおんぶして運んでタクシーに乗せて…….家まで送るのに住所聞いたら『まだ飲む!大迫の家で飲むー!』って騒いだんだろうが」

「あ、そうだったの……」



私、酔った勢いでなんてことを……。



「けどまぁ、もううちの近くまで来てるし終電もないし、今日はうちに泊まっていけば」

「えっ!?いや、でも……」



付き合ってもいない男女が一晩泊まるなんて、と躊躇う私に大迫は冷静な目を向ける。

そしてこちらへそっと手を伸ばした、かと思えば突然私の鼻をぎゅっとつまんだ。



「ふがっ」

「心配しなくても、そんな間抜けな声出すような女相手に手なんて出さない」

「なっ……!」



不意打ちで出てしまった間抜けな声に、恥ずかしくて顔が熱くなる。