「そういえばこの前のホームページ、大体の形ができて里見からも了承貰ったんだよ」
大迫はグラスの中身をひと口飲むと、スマートフォンを取り出し、あやめのお店のホームページのイメージデザインを見せてくれた。
それは先日見せてもらった作成中のものに、私が撮った写真が上手く差し込まれたもので、柔らかさとあたたかさがよく出た素敵なページとなっている。
「すごい、素敵」
「だろ。清水の写真があってこそだけどな」
そんなふうに率直に褒められるとなんだかくすぐったい。
大迫がページをひとつずつ見せていくと、中には中村さんの写真が出るページもある。
「これ里見の旦那だろ?イケメンだよな」
「うん、人当たりもよくていい人だったよ」
「里見と真逆すぎだな」
はは、と笑う大迫に私も「だよねぇ」と笑う。
そのタイミングで前菜が運ばれ、カウンターの中ではシェフが目の前の鉄板でお肉を焼き始めた。
「清水はそういう相手は?」
「いないよ、言わせないでよ。付き合ってた相手と別れたばっかりで、ひとりで生きていこうと意思を固めてたところ」
「その感じは、いい別れ方しなかったな」
図星を指すその言い方に、私はグラスの中身をぐいっと飲み干す。
「いいの、私はもう恋愛なんてこりごりだし結婚なんて興味ない!仕事と生きてくの!」
「まだ30なのに随分と達観したな」
「達観もしたくなるよ。けどさ、フリーはなかなか大変だし親もいい目で見てないし……早速弱音吐きたくなってる自分が、悔しい」
空になったグラスをにぎる手に、思わず力がこもってしまう。
すると不意に、大迫は私の頭をポンポンと優しく撫でた。
不思議に思い顔を上げると、大迫はその切長の目をそっと細める。
「……ひとりでなにかするって、そりゃあ大変だし不安だし、周りの目も厳しいよな。俺もそうだったからわかる」
「大迫も……?」
「それに俺も会社立ち上げるときに彼女いたんだけどさ、『起業なんて上手くいくかわからないのに』って反対されて結局別れたんだよ」
大迫も似た気持ちを知っているんだ。
会社という組織を離れひとりで立つ不安。誰も寄り添える相手のいない寂しさ。
「けどそういうときこそ、どんどん弱音吐きだして、誰かの優しさに頼って、美味いもの食って力つけて。そうやって乗り越えていくしかない」
それは、弱音を吐いてもいい、頼ってもいい、そう言ってくれている気がした。
不思議。大迫のその一言と大きな手に、胸の中のつかえが取れていくようだ。
「……ありがと。よし、じゃあ今夜は飲んで食べるぞー!」
「潰れない程度に、ほどほどにな」
小さく笑う彼に、私も自然と笑みをこぼした。



