愛がなくても、生きていける




「早速なんだけど、ホームページに使う写真の相談でさ」



大迫はノートパソコンをそっと開くと、制作中のホームページのイメージ画面を見せてくれた。

それは白とゴールド、オレンジを基調とした色合いのホームページで、あやめのお店らしい柔らかな雰囲気だ。



「トップ画面には店先の花の写真を載せたいってことで、この写真がいいと俺は思うんだけど」



そう言いながら大迫が表示するのは、昨日私が送った店先の写真だ。

黄色やオレンジ色のマリーゴールドが並んでいて写真映えもいい。



「あのお店、店頭もマリーゴールドがよく並んでたけど……あやめの趣味なのかな」

「趣味というか、里見が好きな花らしい」

「そうなの?」



クールな雰囲気のあやめからは想像がつかず、思わず『意外』といった声を出してしまう。

そんな私に大迫も同意するように頷いた。



「俺もページの雰囲気とか話してた時に気になって聞いたんだよ。そしたら、『夫みたいな花だから』ってさ」

「ノロケか」

「ノロケだな」



お互い声をかぶせるようにして言った。そのタイミングがなんだかおかしくて、大迫と顔を合わせると思わず笑い合った。



卒業以来一切顔を合わせることもなかったのに。どうしてか、こうしてほんの少し顔を合わせるだけであの頃のふたりに戻ることができてしまう。

年を経ても、見た目や立場が変わっても、大迫とふたりの空気は居心地がいい。それだけは変わらないと実感した。




それから私たちは、ホームページのことはもちろん、仕事のことや互いの近況を軽く話したりして、気づけば2時間が経とうとしていた。

大迫は自分の腕時計を見て、ふと思い出したように口を開く。



「……と、悪い。そろそろ戻らないと。次の打ち合わせがあってさ」

「忙しそうでなにより」



大迫は鞄にノートパソコンをしまいながら言う。



「今度近いうち飲みにでも行こう。今度は仕事の話抜きで」

「おっ、社長様ごちそうさまでーす」

「って奢らせる気満々か」



軽口を叩きながらふたりでカフェを出て、私は駅の方へ、大迫は違う通りの方へ、それぞれ帰り道の方向へ分かれた。