「おばさん……どうして」
「看護師さんから連絡もらったの。姉さんったら『自分が亡くなったらまず妹に連絡するように』って看護師さんに頼んでたみたいなのよ」
お母さんが……。
きっと、私がこうしてどうもできなくなってしまうことをわかっていたのだろう。
「きっと沙智ちゃんの精神状態を考慮してたのね。大丈夫よ、お葬式のことも周囲への話もおばちゃんがちゃんと手伝ってあげるからね」
叔母も、姉である母を亡くして悲しい気持ちもあるだろう。けれど今は私を気遣うように、私の背中をさすってくれた。
それから叔母は、瞬く間に周囲への連絡や葬儀屋への対応をしてくれた。
私も、ぼんやりとはしていられない。
娘として、喪主として母を見送らなければ。
そう自分に言い聞かせ、今にも崩れ落ちそうな足に力を込めて立ち上がった。
そして、母が亡くなった日から二日後。
通夜が行われる葬儀場で喪服の黒いワンピースに身を包んだ私は、ひとり棺桶の中を見つめながら通夜が始まるまでの時間を過ごしていた。
小さな葬儀場の中には、大きな祭壇と沢山の花が飾られている。
棺桶の中の母は、白装束に身を包み、青白い顔で静かに目を閉じていた。
……本当に、眠ってるみたいだな。
もう目を覚ますことはないとわかっていても、今にも目を覚ましてくれるんじゃないかと思ってしまう。
「ごめんね……お母さん」
私、お母さんになにもしてあげられなかった。
うまく言葉は出てこないけれど、もっとなにかしてあげられることはあったかもしれないのに。
自分の無力さが悔しくて、涙がまた滲む。
するとそこへ、部屋の入り口から叔母が声をかけた。
「沙智ちゃん、お花屋さんが来てるんだけど」
「お花屋さん……?」
って、なんの……?
意味がわからず顔を上げると、叔母のうしろに立つのは礼服姿の中村さんだった。
その手には白い大きな箱が持たれている。



