愛がなくても、生きていける




仕事を終えたその日の帰り道。

私はひとり駅前の通りを歩いていた。



いつもだったら真っ直ぐ家に帰るところだけれど、今日は少し寄り道をしようと思い私はデパートの前を歩く。

なにげなく見たショーウィンドウに飾られていたのは、メンズブランドのポスター。

モデルの外国人男性は、腕時計を手に微笑んでいる。

その横には『for you』と書いてあることから、男性向けのギフトのポスターであることを察した。



プレゼント、か……。

思えば私中村さんにすごくお世話になっているわけだし、なにかお礼するのもありかも。

けど物って重いかな。お菓子とか形に残らないもののほうがいいかも?

けどなにをあげても彼は優しいから、私の前では『ありがとう』と笑ってくれるのだろうことは想像ついた。



ブーケ作りを教わりながら、一緒に過ごす時間が少しだけ増えた。

その中でいっそう中村さんは優しい人だと思った。



いつも笑って親しみやすく、でもほんの少しの期待もさせない。

肩や手ひとつにすら触れることなく、男女の空気も漂わせない。

ただの『花屋の店長』として笑いかけてくれる。



そもそも私を異性として見ていないからか、それとも、私や奥さんに余計な誤解をさせてしまわないようにか。

どちらにせよ、自然な空気感で守るべきところは守る。そんな彼のことが余計愛しく思えてしまう。



なにを贈るかは決めてないけど、ちょっと見ていこうかな……。

そう考え、デパートの中へ入ろうと入り口へ向かい歩き出した。



「ぱぱーっ、ままぁー!はやくぅー!」



すると、女の子の甘えるような声とかける足音が聞こえた。

前方に見えたのは細く柔らかな髪の毛をふたつに結んだ、幼い女の子。まだ3歳くらいだろうか、つたない足取りで、ひとりずんずんと道を歩いていく。

お尻が重そうなその後ろ姿がかわいらしく、つい頬を緩め見つめた。



それに続いて、急いで女の子を追いかける両親の姿が見える。