愛がなくても、生きていける




中村さんと話しながら、初めてのブーケは完成した。

ピンク色のスイートピーと、それを包む柔らかなピンク色のラッピングペーパーと白いリボンというかわいらしいミニブーケだ。

私はそれを手に、少し緊張しながら母の病室へ向かった。



「お母さん、お花持ってきたよ」



横になる母にブーケを見せると、その目はじっと花を見つめてから眩しそうに細められる。



「今日のは、一段ときれいね……」

「本当?実はね、中村さんにお願いして私が作らせてもらったんだよ」

「沙智が……」



母は少し驚いて、それからゆっくりと嬉しそうに微笑んだ。



「ありがとね……沙智」



そのたったひと言だけで、嬉しくて涙が出てしまいそうになる。けれどここで泣いたらお母さんを心配させてしまうかもしれないから、ぐっと堪えた。



それから私は中村さんのもとでいくつもの花束を作った。

白いバラ、黄色いミモザ、桃色の金魚草……さまざまな花を包むたび、母は嬉しそうに笑った。



私にも、できることがあった。

そう知ることができて、その度にこの心が救われるのを感じた。



そんな日々を過ごし1ヶ月が経ち、もうすぐ訪れる春の暖かさを感じ始めたある日。



「最近、重森さん表情柔らかくなったね」



仕事終わりのスタッフルームで、事務仕事をしていた店長が穏やかな声で言ったことに、私は首をかしげた。



「え……そうですか?」

「うん、前より少し明るくなった。あ、もしかして彼氏でもできた?」

「い、いえ!そんなことは、なくて」



つい中村さんの顔を思い浮かべてしまいながら、彼氏なんてとんでもない、と頬を熱くしながらも否定した。



「最近入院中の母にブーケを作って持って行ってるんですけど、母がいつも喜んでくれて……それが嬉しくて、気持ちがちょっと明るくなるというか」



私の話に、店長は「そうなんだ」と感心したように頷いた。


「きっとお母さんは、ブーケだけじゃなくて重森さん自身が明るくなってることも嬉しく思ってくれてるんだろうね」



店長の人柄が現れる優しい言葉に、胸の奥がくすぐったくなった。



私、明るくなれたかな。

だとしたらそれはきっと、中村さんのおかげだ。

いつも笑顔で心を照らしてくれる彼がいるから。



もっと、私変われるかな。

彼のような眩しい人になれるように。