「だけど、沙智ちゃんがお母さんにできること、ひとつあるよ」
「え……?」
私にできること……?
そんなものないと思っていただけに、驚きながら顔を上げた。
すると目の前には、中村さんの優しい笑顔がある。
「沙智ちゃんが仕事休みの日、うちでブーケ作らない?」
「ブーケを……?」
「お母さんの元へ持っていくブーケを、沙智ちゃん自身で花を選んで作る。それだけでもお母さんもきっと喜ぶよ」
私が選んだ花で、私がブーケを作り贈る。
お母さんのために。
きっと中村さんは、なにかをすることで私の悲しみを紛らわせようともしてくれているのだろう。
だけど、そんな些細なことでもお母さんが喜んでくれるかもしれない。そう思ったら、断る気にはならなかった。
「でも私……できますかね。あんまり器用な方でもないんですけど」
「大丈夫。一緒に頑張ろ」
穏やかな声で、けれどはっきりと『大丈夫』と言い切ってくれる。そんな彼に、不思議と心が軽くなった。
……中村さんは、すごい人だ。
たったひとりの客のために、時間を割いて話を聞いて、こうして希望まで与えてくれる。
罪なほど優しい人。
こんなにも甘えてしまっていいんだろうか。
だけど、私に今できることなんて限られているなら。ささやかでもできることをしよう。
そう決めて、私は小さく頷いた。



