それから病院へ戻り、売店での買い物を済ませ病室へ向かった。
「お母さん、お花買ってきたよ」
ベッドに横になる母へ声をかけると、母は小さく顔を動かしてブーケへ目を向けた。
「中村さんのおすすめでね、今日はミモザを包んでもらったの。春らしくていい色だよね」
「うん……きれい」
花を見るときの母の目は、昔から優しい。その眼差しが見たくて、私はこうして花を贈っている。
「もうすぐ春だし、今年は外出許可もらってお花見行こうね。ほら、お母さん桜が一番好きって言ってたじゃん」
子供の頃の会話を思い出しながら言った私に、母は嬉しそうに微笑んだ。
桜の季節まで、あと2ヶ月弱。
それまでにお母さんの病状がよくなるとは限らないけれど、この近所だけでも外出許可もらえたらいいな。
そのときにはどこの桜を見にいこうかな、なんて考えながら花瓶を手にとる。
「重森さん。お待たせ、先生のほう準備ができたから相談室へどうぞ」
「あ、はい」
そのタイミングで看護師さんに呼ばれ、私は花を活けるのを中断し相談室へと向かった。
けれど、そこで母の主治医から言われたのは耳を疑うひと言だった。
「正直申し上げますと、もう……ゆうこさんに残された時間は、長くありません」
「え……?」
残された時間は長くない。
それはつまり、余命宣告……。
「それって、どういう意味ですか……長くないって、母の病状は悪化してるってことですか!?」
先生からはっきりと伝えられたことに動揺して、つい声を荒らげてしまう。
「どうにかなりませんか!?手術でも薬でも……できることならなんでもします!お金も用意します!だから、だから母をっ……」
縋るように先生の肩をつかみ、必死に声をあげる。
けれどそんな私に対しても、先生は冷静に、真剣な顔で向き合った。



