「一緒に元カノを叩いてほしいんですか?それとも、『君みたいな子なら』って選んでほしいんですか?元カノが自分をどう言ってるかをこんなところで聞かせてくるような女、私だったら嫌ですけどね」
「なっ……!?」
「一度は自分が選んだ人の悪口を聞かされ、さらにはその人から自分がどう言われているか聞かされる。そんな中村さんの気持ちにもなったらどうですか」
それは、言い過ぎじゃないかと思うくらいあまりにもはっきりとした言葉だ。
けれどこれまで言われてきた『可哀想』や『ひどいよね』の言葉たちよりも、この心に寄り添ってくれるのを感じた。
ところが、言われた佐々木さんはそれが気に障ったらしく、顔を真っ赤にして肩を震わせている。
しまった、泣いてしまったか、と彼女の表情をうかがおうとした、その時。
「バカにすんじゃないわよ!この地味女が!!」
泣いているどころか彼女は怒りに顔を歪め、叫びながらテーブルの上のビールジョッキを振り上げて、里見さんに中身をかけようとした。
「あっ!待った!ストップ!」
俺は思わずその手を掴み止める。
ところが、中身はそのまま勢いよく俺の方へと飛び出して……。
バシャバシャ!と勢いのいい音とともに俺を頭の上から濡らした。
それにはそれまでにぎわっていた周囲も騒然とし、佐々木さんも一気に冷静になった様子で今度は顔を青くさせる。
「な、中村さん、ごめんなさい私……」
「大丈夫だよ。きみのほうは?服とか濡れてない?」
「はい……」
「ならよかった」
そこに騒ぎを聞きつけた店員さんが、厨房の奥から駆けつけてきた。



