愛がなくても、生きていける




その夜。

新宿の街中の大きな通りから一本入った路地裏にある、小さな居酒屋を貸し切って懇親会は行われた。



奥の座敷席に座る俺の左右と向かいは全員女の子で固められており、図らずもハーレム状態になってしまっている。

同期や先輩など、男子全員からはうらめしいような視線が向けられた。



ビールグラスに口をつける俺の隣で、女の子が話を切り出す。



「初めまして、私経理部の佐々木(ささき)です。今年新卒で入ったばっかりなんです~」



甘い声で言う彼女は、カールさせた茶色い髪と、袖にフリルがついたノースリーブと格好もたしかに今時の女の子といったふうだ。



「営業部の中村です、よろしく」

「中村さんのことは知ってますよ~、かっこよくてやさしくて、『営業部の王子様』って有名ですもん」



王子様……。

こっぱずかしくなってしまうようなその呼び名に、つい苦笑いがこぼれる。



「それで、早速なんですけど聞いてもいいですか?」

「ん?なにを?」

「中村さんって、うちのビルの受付嬢と別れちゃったって本当ですか?」



早速嫌な話題きた……。

昼間も噂されていたその話題に、周りの女性たちは一斉に興味津々といった顔になる。



本当はこんな話題いやなんだけどなぁ。

その場の空気を悪くするわけにもいかず、俺は小さく頷く。