愛がなくても、生きていける




「里見さんは今回は懇親会行くの?たしか前回は欠席だったよね」

「えぇ。飲み会はあまり好きではないですけど、まぁ付き合いですのでたまには」

「そうなんだ。せっかくだし、楽しもうね」



あたり障りのない言葉をかけにこりと笑う俺に、里見さんは無愛想な顔のまま、なにか言いたげにこちらをじっと見た。



「ん?どうかした?」

「いえ。……中村さんの言葉は、どうも薄っぺらいなと」

「え!?」



里見さんはそれだけ言うと、スタスタとその場をあとにした。

ひとり残された俺は、ぽかんとまぬけに口を開けて、遠ざかる後ろ姿を見つめるだけ。



薄っぺらいって……初めてあんな言われ方した。

そんなに嘘くさい言い方だったかな。全く心にないことを言ったわけではないんだけど。



……いや、里見さんのような冷静に物事を見る人にはバレてしまうのかも。

俺が、愛想以外なにも持っていない薄っぺらい中身の人間だということ。



里見あやめという彼女は、経理部で働くひとつ年下の後輩社員だ。

黒く長い綺麗な髪と色白の肌、猫のようなぱっちりとした目が印象的な美人で、スタイルもいい。

ぱっと見モデルのような容姿をしている。



けれど、常に冷静でにこりともしない。

同性に対しても上司に対しても、群れない媚びないことで有名で『少し変わった人』として社内でも名が知られている。

けれど物事をはっきりと言う彼女のことを気にいる人も多いことも事実。



お世辞は言わない、人の評価も気にしない。

そんな彼女は、俺とは真逆なタイプの人だとつくづく思う。



……それにしても、間近で見ると本当綺麗な人だよな。

顔立ちよりも姿勢よりも、凛とした眼差しが美しい人だと思った。