「お前も飛躍できるように。1本分けてやる」
私にも……?
「なに、飛躍してお前も早く結婚しろ、ってこと?」
「あ、いや、そうじゃなくて」
自虐的に笑った私に、辰巳は慌てて否定してこちらを見つめた。
「この前も言ったけど、ここまで来れたのは初音のおかげだから。その日々があったから、今ここにいられてる。だから初音にも……飛躍した先で幸せと出会えることを、祈ってる。
仲間として一番近くで、応援してる」
まっすぐ見つめて彼が言うのは、きっと心からの言葉。
人の気も知らないで、そうやってまたこの胸を照らすような笑顔を見せる。
やっぱり好き、って思わせて、簡単には未練を捨てさせてくれないんだ。
だけど、辰巳はなにも知らないまま。
気づかないままで、いい。
心の中でささやいて、私は彼が差し出す花をそっと手に取った。
「……私も、辰巳のおかげで頑張って来れたんだよ。辰巳に追いつきたくて、辰巳の自慢の仲間でいたかったから」
こぼすのは、精いっぱいの本音と、ほんの少しの強がり。
だけど嘘は微塵もない。
「だから私も、ふたりの幸せを祈ってる。仲間として応援してるから」
心から、言うよ。
「辰巳、結婚おめでとう」
笑顔で初めて言えたその言葉に、辰巳も微笑み頷いた。
その表情に胸はあふれて、私は辰巳に背中を向けるとふたたび外へ向かうべく廊下を歩き出した。



