愛がなくても、生きていける




「わぁ、素敵なお花。ありがとうございます」

「わざわざありがとうな。そうだ、せっかくだしウェルカムボードのところに飾っておくか」

「そうだね」



幸せそうに微笑み、花束を囲むふたり。その光景にまだ胸は痛むけれど、今はどこか落ち着いた気持ちで見つめられる。

それはきっと、あの日思い切り泣いたことと、花屋の女性からの言葉のおかげで、この恋心が悲しいだけのものではなくなったから。



「スイートピーは、『門出』とか『蝶のように飛躍する』とか、そういった意味があるんだってさ。今日のふたりにピッタリでしょ?」



ふふ、と笑って言った私に、辰巳と莉奈さんは目を合わせて微笑みながら頷いた。



「じゃあ、そろそろチャペルのほうに行くね。みんなもじきに来るだろうし」

「あぁ。みんなにもよろしく言っておいてくれ」



ふたりに手を振って、笑顔のまま部屋をあとにする。

バタン、と閉じたドアの音を聞く前に足早に廊下のカーペットを踏んだ。



……大丈夫。

ちゃんと笑えてた。

仲間として、彼に花束を贈れた。



そう安堵した瞬間、



「初音」



突然背後から名前を呼ぶ辰巳の声に、心臓がドキッとした。

気を緩めかけたところで呼ばれたことに驚きながらも、ひと呼吸おいてから振り向く。



「なに?どうかした?」



追いかけてきたらしい辰巳は、一本の花を手にしておりそれをこちらへ差し出す。

それは花束から一本だけ抜いてきたらしいピンク色のスイートピーだ。

なんで、と目を丸くする私に辰巳は目を細めて笑う。