愛がなくても、生きていける




それから数日が経ち、迎えた日曜日は雲ひとつない青空が広がる気持ちのいい晴れだった。

真っ白なチャペルが印象的な都内郊外の結婚式場へみんなよりひと足早くやって来た私は、式場内の青いカーペットの上を歩いていた。



真新しい黒いレースのドレスに身を包み、リボンがついた花束を手にフロアの奥へ続く廊下を歩く。

そして【waiting room】と書かれた茶色いドアの前で足を止めると、深呼吸をひとつした。



緊張から早くなる鼓動を落ち着けてから、ドアをコンコンとノックすると、すぐにドアは開けられた。



「はーい……って、初音!」



顔を見せたのは、真っ白なタキシードに身を包んだ辰巳だ。

体にぴったりと合ったタキシードと、きちんと整えられた髪型が、まるで彼をいつもとは別人のように見せる。

けれど嬉しそうに笑う表情はやはり見慣れた彼のままで、この胸に張り詰めていた緊張感が解けるのを感じた。



「渡したいものがあって、ちょっと早く来ちゃった。今大丈夫?」

「あぁ。莉奈、初音が来てくれた」



辰巳が声をかけると、奥から姿を見せた莉奈さんはフリルいっぱいのウェディングドレスを身にまとっている。

純白ではなくアイボリー寄りのそのドレスは、色白でかわいらしい彼女の雰囲気によく似合っている。



「初音さん。今日はわざわざありがとうございます」

「こちらこそお招きありがとうございます。とってもきれいですね」



笑って言った私に、莉奈さんはチークの塗られた頬をよりピンク色に染めながら微笑んだ。



「これ、うちのチームのみんなからのプレゼント。式が始まったら渡すタイミングなさそうだから、今のうちに」



そう言いながら辰巳に手渡したのはピンク色のスイートピーを中心にした花束で、純白のふたりをあたたかな色で照らした。