「私、その人のことがずっと好きで……いつか自分は彼と付き合えるって思ってたんです。好きなんて言えなくても、絆があるって思ってた」
言葉にしなくたって、そばにいるのは私だって思ってた。
そう、思い上がっていたんだ。
「だけどそれは仕事仲間としての絆でしかなくて、気づかないうちに彼には大切な人が出来ていた」
言葉にすると同時に視界は滲み、涙がポロポロとこぼれだした。
わかってる。
なにも言えなかった、現状に満足していた自分が悪い。
少しでも早く『好き』と気持ちを口にしていたら、結果は変わっていたかもしれないのに。
妃那が言っていた通り、驕っていたんだ。
「今更でしかないけど、気持ちを伝えようって、そしたら少しでも自分のことを見てくれるかもって思った。
けど、気づいちゃったんです。私に可能性はないって」
辰巳のあんな優しい笑顔、初めて見た。
私の方が彼女より長く辰巳と過ごしてきたのに。
沢山の会話、時間を費やしたのに。
私の方が好きだって、自信があるのに。
彼があんなにあたたかな眼差しで、愛しさを伝える人だということすら、知らなかった。
それだけで私と彼女の差は明白で、敵わないと思い知らされた。
この胸にあふれる気持ちのように、涙はどんどんこぼれていく。
頬をつたい床を濡らし、この手を肩を震わせる。
胸が締め付けられて、苦しい。
恋が叶わないことは、こんなにもつらく切ない。
べつに、愛がなくても生きていける。
仕事や趣味、楽しいことに生きる価値を見出すことも出来る。
だけどそれでも、彼からの愛がほしかった。
私にも、あのあたたかな眼差しを向けてほしかった。
「好きだった時間も、想いも、全部無駄なんだって捨てられたらいいのに」
息苦しさで喉が詰まりそうになりながら呟く。
すると目の前には、スッと薄水色のハンカチが差し出された。
のりがきいた、几帳面さがうかがえるハンカチから視線を上げると、真っ直ぐな目で私を見つめている彼女が口を開く。



