愛がなくても、生きていける




ただ辰巳に追いつきたくて必死で、それだけだった私が、彼の力になれていたなんて知らなかった。

辰巳存在が、私を支えてくれていたように。



知ってしまった今、この胸には彼への想いが一気にあふれだす。



やっぱり、好き。

諦めるなんて無理。

可能性なんてないとわかってる、それでも言いたい。



今更自己満足だと呆れられてもいい。仲間としての、彼の『特別』から外れたっていい。

あなたが好きだと、伝えたい。



「あのさ、辰巳……」



駅を示す標識が見えたところで、勢いそのままに辰巳の名を呼びかけた。

そのタイミングで顔を上げた彼は、道の先になにかを見つけたように目を止める。

知り合いでもいたのだろうか、と私もつられて目を向けると、その視線の先にはひとりの女性の姿があった。



「あれ、辰巳くんだ」



『辰巳くん』、と彼を呼ぶ甘い声をした彼女は、150センチ前半の小柄な体を鮮やかなエメラルドグリーンのカーディガンで包んでいる。

小さな顔の輪郭のなかにぱっちりとした二重の目が印象的で、色白な肌とふわふわのロングヘアがとても似合うかわいらしい顔立ちだ。



「莉奈!」



辰巳が呼んだその名前ひとつで、彼女が結婚相手の子だと察した。



この子が……辰巳の、結婚相手。

一瞬で心に緊張感がはしる。



「どうしたんだ?こんなところで」

「ほら、そこの病院に親戚のおばさんが入院してるって話したじゃない?そのお見舞いにきたの」

「あぁ、そういえばそんな話してたっけ」



南青山にある大きな病院のほうを指さす彼女に、辰巳は頷き、思い出したように私を見る。