「おいお前ら」
「い、井上!?」
突然目の前に出た辰巳に、私が驚くより先に彼らの驚きの声がその場に響く。
「なに好き勝手言ってんだ。初音のことなにも知らないくせに」
ちょっと辰巳、と引き留めようとするけれど、辰巳は私には目もくれず男性社員たちを睨む。
「あいつがこれまでどれだけ努力してきたか知ってるのか?営業の勉強も必死にして、その中で頼まれた仕事もちゃんとこなして……そんな苦労も頑張りも知らずに、勝手な言葉で軽んじるな!」
辰、巳……。
私のことなんて、庇ってくれなくてもいいのに。
そう思う反面、彼が私の努力を認めるように言ってくれる言葉がうれしい。
それだけで、ついさっきまでの泣きそうな気持ちも吹き飛んでしまう。
「な、なにマジになってるんだよ。あ、まさかお前榊とデキてたりして」
辰巳に強い口調で叱られたことが悔しいのか、彼はひやかすように言う。
「バカなこと言うな」
けれど辰巳は、一瞬の惑いもなく否定した。
「俺は初音のことを一番近くで見てきた仲間として言ってるんだよ。そこに好きとか嫌いとか男とか女とか関係ねーんだよ」
『仲間』。
辰巳がはっきりと言い切った言葉がまた、私には可能性のひとつもないことを思い知らせる。
私は彼にとって、恋愛対象じゃない。異性じゃない。
その事実が苦しい。
だけど、そういう真っ直ぐな気持ちを隠すことなく言葉にしてくれる辰巳が好きだと思った。
強くて優しくて真っ直ぐな辰巳がやっぱり好きで、愛しくて。
どうしても『好き』という気持ちが諦めきれないよ。



