愛がなくても、生きていける




「これ……?」

「やるよ。俺の昼飯用に買ったやつ。味噌汁は二日酔いに効くっていうし」

「えっ、いいの?」

「あぁ。その代わり、午後までには本調子取り戻しておけよ。二日酔いで仕事ミスするなんてなったらとんでもないからな」



辰巳はそう言って自分のデスクへ向かって行く。



優しいなぁ……。

呆れながらもこうやって気遣ってくれる。そういう優しさにまた心が掴まれてしまう。

この親切さは狙ってやってるわけでもなく、自然体でできちゃうから反則だ。



それから私は午前中の仕事をこなし、昼休みには辰巳からもらったお味噌汁を飲み、ご飯も軽く食べ……。

午後にはほとんど、本調子を取り戻していた。



「よし、回復!辰巳、取引先行こう!」



元気よく声をあげ、辰巳とともにオフィスを出る。



「俺の味噌汁のおかげだな」

「私の回復力の賜物だから!」



なんて、またかわいくないことを言ってしまう。

こういうときに『そうだね、ありがとう』『嬉しかった』って言えるのがかわいい女子なんだろうな。

心の中で嘆きながら、辰巳とともに廊下を歩いて行く。



「今日の話は今度のイベントで卸す商品の件だったよね」

「あぁ。再来月の食フェスでうちのドリンクを出してくれるっていうから、ラインナップとか数量の相談に」



その食フェスの依頼も、元々は辰巳を贔屓にしている取引先からの紹介でつながった縁だ。

あくまで私はサポート役でしかないけど……それでもこうしてふたりで仕事できるのは嬉しいとか思えちゃうな。



そんな気持ちを抱えながら歩いていると、なにやら話し声が聞こえてくる。